踊り子たち

夕食を終え

車  乗り込む


エンジン  ふかす

父の癖。


珍しく  家族  みんなで

コスモスの咲き乱れる公園へ


真っ暗の道

くらくらと  曲がりながら

エンジンふかし

くねくねと   カーブを登る



夜空にぼやけた  ハーフムーン



柵を越え   車  とめる


ライトに浮かびあがる  


白っぽく  淡くうきだす

コスモスたち


暗闇に   そそりたつ

木の陰



甲高い  動物の鳴き声



急に   またたく

きらきらと    舞い降りる

宝石箱




芝生に寝そべり

白くテカった  コスモス  眺める



暗闇から

コビト  あらわれそうな

妖しい   世界

魅惑的なコスモスの踊り子たち

眩しい  ライト  あびて

狂うように   舞い踊る


わたし  我を忘れて

美しい世界に迷いこむ。




もう一台  車が止まる

若い男女の

甲高い声



ジャイアンツの試合   家で見ると

突然  父は  車に乗り込む


エンジンふかし

ラクション鳴らす



幻想的なコスモスの踊り子たちに

別れを告げる間もなく

足  もつれながら

車  たどり着く



幻想的な  美しい世界

童話のなかに

迷いこんだ  不思議な世界

メルヘンチックな心



なにもかも  ビリビリと

破られ


無惨に

捨てられた


惨めな心





涙ぐみ

窓に頭ぶつける

わたし。



傾きかけたハーフムーン

笑いかけてくる。