川で蟹とり

お母さまの目を盗んでね
川で蟹とりしたのよ

遠い目をして

幸せそうに

話す 

祖母



ばれたら

たいへんだから

どきどきしてね

楽しかった



夜  汽車が通ってね

暗闇に  連なった 明かりが走るのよ



びしょ濡れになって

川で蟹とりしたのよ


蟹を煮付けて
頬張る
祖母

眺める
わたし。



おかあさまに内緒でね

川で蟹とりしたのよ

一匹もとれなかったけどね



楽しかったわ

裸足で土手を歩いたの


幼い頃の
懐かしい  想い出


気位の高い祖母

孤独な人

思い出を食べて

生きていた。



川で蟹とりしたのよ。



何度も

何度も

繰り返す。