幸せの香り

雷と横殴りの雨

車止め  外を見る


大粒の雨   ボンネット跳ねる

バタバタバタと走り去る


雷  光り  

まぶた  閉じる



しばらくすると

光さしこみ

青い空   丸くあらわれる




梅雨の晴れ間




黄色い雨靴

ピンクのレインコート

かわいい少女

ケーキ屋さんから出てくる




ケーキの入った   箱を  

抱えて

ママと一緒に

ニコニコしながら

車に乗り込む



ケーキ屋さんの甘い香り

幸せの香り


幸せな親子


こころ   和む




梅雨の晴れ間


ふらふらと

甘い香りに誘われ

幸せの箱

抱えてる

満天の星

ベタつく汗

淀んだ空気


蛍   乱舞する  

たくさんの人  喜び  楽しむ



はしゃぐ   声から

逃れ

逃れ

逃れ




草の香り   誘われ

畑   入り込む



息を止め

夜空  見上げれば

煌めく星   広がる




宇宙と一体になれるような

満天の星

見つめる



深呼吸

深呼吸


星空に吸い込まれてしまいそうな

錯覚

ふわふわと

身体  宙に   浮く




くらくらと

星  廻る


くらくらと

星空   廻る

あざみの花

通学路

あざみの花  紫色を見かけると

自転車から降りて

手を刺す   刺

我慢しながら

手折る



家に帰り

祖母の部屋へ

編み物をする   ちいさな背中

花瓶にいけた

あざみ


紫色の凛とした   佇まい

刺のある

簡単には人を寄せ付けない  気高さ


どこか   祖母に似た

あざみの花


見かけると   

思い出す



あざみの花を   乙女のように

喜んで

いとおしげに   眺める

祖母の純粋な眼差し



あざみの花

見かけると  

思い出す



祖母の笑顔

新しい町

ダムができて

消えた街


移築した

茅葺き屋根

お雛様

たくさん   並ぶ



薄暗い    部屋

かび臭い   雛人形



新しいレストラン

新しいお土産屋さん

新しい温泉

新しいお家

新しい役所

新しい道



お蕎麦   食べて

豆腐    買う

温泉    入って

ソフトクリーム   食べる



ダムになった

古い町



あのままが

良かった。



昭和の時代

泥にまみれた

本当の人間の生活



生きている

息遣い   荒々しく

感じる   

ノスタルジックな町

美しい  渓谷

川蝉   


鮎釣り


猟師    猟犬

窪んだ瞳  人生をうつす  深いシワ

老女 と  黒猫





三時間かけて

来てみたけど


ノスタルジックなあの町は


どこかでみたような

何処にでもあるような

ありふれた町になってた。




モヤモヤしたまま

帰り道



道路の真ん中

野生の猿

かわいい小猿




驚かせないように

徐行する



親猿   崖の上

心配そうに  見ている




野生の小猿に

母  喜び



やっと  

来て良かったと

安堵した

夕暮れ。

鬼百合

川縁  旧道

細い道


深碧色

ひときわ目立つ

ゴーギャン・オレンジ



ひとつ   ふたつ

数えて歩く



川縁    

細い道


煉瓦作りのトンネル

深碧の土手

ゆさゆさと

雑草たちの通り道。



ぽつり  ぽつりと

明るく咲く

陽気な鬼百合   





梅雨の晴れ間の

散歩道




  

朝顔 夕顔

朝     朝顔が咲き

夕     夕顔が咲く



夕     朝顔はしぼみ

朝     夕顔はしぼむ



朝顔の 天真爛漫な   笑顔

夕顔の 妖艶な     微笑み


一人の   女性の   一日を

覗きみたような


恥ずかしさ。




朝     朝顔は咲き

夕     夕顔は咲く



夕     朝顔がしぼみ

朝     夕顔がしぼむ



大人の  女性の  心模様

垣間見たような

やるせなさ。




朝     朝顔が咲き

夕     夕顔が咲く。

蓮の花

ピンクの大きな花

太鼓橋

鯉が泳ぐ

池    たどり着く


蓮の花

堂々と咲いている



自らの美しさ   誇るのではなく


生きていることを
誇りに
凛と咲く。


ピンクの大きな蓮の花

誇らしげに  咲いている。



鯉の餌

投げ入れてみる

たくさんの大きく開いた口

グロテスク

後ずさり



蓮の花

揺れる

揺れる

揺れる




蓮の花のように

泥のなかでも


美しく  気高く  凛と
生きていたい



白鳥のように

足を必死に動かしながら

涼しげに  穏やかに  微笑んで 
泳ぎ続けていきたい。



もう、駄目だ。
わたしには、無理。



落ち込んだときは




蓮の花




まっすぐに   天を仰ぐ

ピンクの花。



励ましてほしくて

励ましてもらいたくて

逢いに行く。